政府は全国平均の時給を「1000円」目指すということもあり、最低賃金の全国平均は年々上昇しています。
今回の引き上げによって、令和3年度の全国平均は「930円」となりました。
最低賃金は、全国一律ではなく、都道府県によって差があります。
最低賃金の改定が行われると、10月頃に適用されます。
最低賃金が上がることは、給与をもらう側はうれしいことかもしれませが、企業側としてはコストが上がることになるので、利益を圧迫することになります。
最低賃金の上昇は必ずしも良いことだけでなく、雇用を奪ってしまうのでは?という懸念の声もあります。
最低賃金とは?
企業が労働者に払わないといけない時給の最低額のことです。
いわゆる「最低時給」のことです。
最低時給より低い額の賃金の場合は、「違法」となり最低賃金より低い賃金の契約は無効となり、最低時給と同様に定めたものとなります。
最低賃金の決まり方
最低賃金の決め方は、「中央最低賃金審議会」というところから引き上げ額の目安を提示されます。
その提示された目安額を元に、地方最低賃金審議会で「労働者の生計費」、「労働者の賃金」、「企業の賃金の支払い能力」などの地域の実情に応じた賃金を審議して決定します。
簡単にいうと経済規模が大きいところは、最低賃金が高いということになります。
最低賃金は2種類ある?
実は最低賃金には2つの種類があります。
都道府県別に決められる「地域別最低賃金」と、業種別に決められている「特定(産業別)最低賃金」があります。
地域別最低賃金と特定最低賃金と比べて高い方を、最低賃金とすることになっています。
◇地域別最低賃金◇
「最低賃金」は全国一律ではなく、都道府県別に最低賃金が定められています。
都道府県は47つありますので、全国には47つの最低賃金があるということになります。
◇特定最低賃金◇
特定最低賃金とは、各都道府県によって産業別に最低賃金が定められています。
引用:厚生労働省特定(産業別)最低賃金全国一覧より
全国的にみて鉄鋼業や非鉄金属業の業種が比較的高めに定められています。
全国の最低賃金
2021年度の全国の平均最低賃金額は過去最高の「930円」となっています。
全国で一番高いのは東京で「1041円」で、一番低いのは沖縄、高知の「820円」で、地域別にみた最大差は200円以上で、率でみると約27%違います。
図解:筆者作成
◇月給で比較すると?◇
8時間/日で20日働いたとすると、一番高い1041円の時給で「166560円」ですが、一番低い時給820円ですと「131200円」となり、その差は月額で3万円強の差がでることになります。
全国平均最低賃金の推移
2002年度から2021年度の全国の平均最低賃金の推移です。
20年で約40%ほど増加しています。
このグラフをみて、自分の昔の高校時代の時給と比べて「今の高校生はいいなー」と思われる人もいるかもしれませんね。
グラグ:厚生省 平成14年度から令和元年度までの地域別最低賃金改定状況より筆者作成
地方別最低賃金推移
地方別で2002年度から2021年度の最低賃金の推移をグラフにしてみました。
◇北海道・東北地方◇
グラフ:厚生省 平成14年度から令和元年度までの地域別最低賃金改定状況よ筆者作成
北海道・東北地方では、北海道を筆頭に全体的に大きな差はありません。
◇関東地方◇
グラフ:厚生省 平成14年度から令和元年度までの地域別最低賃金改定状況よ筆者作成
関東地方ですと、「東京・神奈川」、「千葉・埼玉」、「茨城・栃木・群馬」がそれぞれ同じ推移を辿っています。
◇中部地方◇
グラフ:厚生省 平成14年度から令和元年度までの地域別最低賃金改定状況よ筆者作成
中部地方では、「愛知」、「静岡」が少し高めです。
◇近畿地方◇
グラフ:厚生省 平成14年度から令和元年度までの地域別最低賃金改定状況よ筆者作成
近畿地方では、「大阪」が一番高く、「京都」「兵庫」と続いています。
◇中国地方◇
グラフ:厚生省 平成14年度から令和元年度までの地域別最低賃金改定状況よ筆者作成
◇四国地方◇
グラフ:厚生省 平成14年度から令和元年度までの地域別最低賃金改定状況よ筆者作成
◇九州地方◇
グラフ:厚生省 平成14年度から令和元年度までの地域別最低賃金改定状況よ筆者作成
九州地方では、福岡が突出していることが分かります。その他の8県はほぼ同水準で推移しています。
月給を時給換算してみる
私は月給だから「最低賃金は関係ない」と思っているのは間違いです。
正社員で月給制の人でも、基本給の部分においては時給換算した時に最低賃金以上になっていることが必要です。
◇月給での時給換算の仕方◇
基本給の部分が最低賃金をクリアしていなければならないので、手当や残業代などの割り増しで支給される部分は除外して計算します。
基本給÷一ヵ月の所定労働時間=時給
この時給が各都道府県の最低賃金以上であれば良いことになります。
※一ヵ月の所定労働時間
一ヵ月の所定労働時間=(年間所定労働日数×8時間)÷12か月
年間所定労働日数が255日であるなら・・・
(255×8)÷12=170時間となります。
例えば基本給が17万ですと、17万÷170時間=1000円となりますので、1000円より高い最低賃金の地域ですと、最低賃金を満たしていないことになります。
この場合、神奈川と東京だと最低賃金を満たしていないことになりますね。
派遣労働者は派遣先の最低賃金
派遣で働いている人で、A県の派遣会社で登録してB県に派遣されて働くというケースもあります。
この場合AとBの県のどちらの最低賃金が適用されるのかというと、B県の最低賃金が適用されることになります。
実際に働いている県の最低賃金が適用されるよ!
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